危険品の等級の判定基準について|航空輸送
「等級」に書かれている数字は、危険性の程度を1〜3に分類したものです。これは容器等級のT、U、Vに相当するものとなります。日本では、危険品を輸送するための指標となっている国際連合危険物輸送勧告を国内法に落とし込んだ、航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示がありますが、この中では容器等級という用語ではなく、等級の語をあてており、ローマ数字ではなく、アラビア数字で1〜3を表記しています。
等級を規定する際の基準や参照しているJIS規格についても、海上輸送における容器等級の判定基準とほぼ同じです。
容器等級|PG | 意味 |
---|---|
容器等級T | 高い危険性を有するもの |
容器等級U | 中程度の危険性を有するもの |
容器等級V | 低い危険性を有するもの |
以下、同告示内の等級等判定基準を規定した備考1についてみていきます。
等級の判定基準
表中に、複数の国連番号、分類又は区分、又は等級が掲げられている場合は、以下により、適切に判定しなければならない。
(1)火薬類
同一の品名であって、複数の国連番号、区分又は隔離区分が掲げられている場合は、国連番号、区分又は隔離区分は、それぞれ次によるものとする。
- 1)国連番号は、それぞれ2)及び3)により定められる区分又は隔離区分に対応する。
- 2)区分は、国際民間航空条約付属書18「航空機による危険物の輸送」及びこれを補足する技術指針に規定する火薬類の危険性区分のための試験方法及び判定基準のうち、航空局長が適当と認めるものにより判定を行うものとする。
- 3)隔離区分は、国際民間航空条約付属書18「航空機による危険物の輸送」及びこれを補足する技術指針に規定する火薬類の危険性区分のための試験方法及び判定基準のうち、航空局長が適当と認めるものにより判定するものとする。
(2)引火性液体
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物件の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める引火性試験を実施し、その試験成績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。
1)タグ密閉式引火点測定器により引火点及び初留点を測定する。
2)
試験結果 | 等級 |
---|---|
初留点が35℃以下のもの | 1 |
引火点が23℃未満であって、初留点が35℃を超えるもの | 2 |
引火点が23℃以上60℃以下であって、初留点が35℃を超えるもの | 3 |
3) 引火点が23℃未満であって、接着剤等粘度の高い輸送許容物件は、国連試験基準マニュアルに従った試験に合格したものであり、次に掲げる要件に適合する場合、等級を3とすることができる。
ア) 溶剤分離試験(攪拌した試験物質を、高さが約25cm で内径が約3cm で均一なメスシリンダーに100m.注入し、24 時 間経過後の分離した溶剤の高さを測定する試験をいう。)において、分離した溶剤の高さが試験物質全体の高さの3% 未満であること。
イ) 区分番号が6.1 又は分類番号が8のいずれにも該当しないものであること。
ウ) 次の表の第1欄及び第2欄に掲げる流下時間(JIS K 5600-2-2 に規定されるフローカップ法により測定され た流下時間をいう。)及びその測定に用いたフローカップのオリフィス径に応じ、引火点が同表の第3欄に掲げる温度 であること。
流下時間 | フローカップのオリフィス径 | 引火点 |
---|---|---|
20 秒を超え60 秒以下の時間 | 4mm | 17℃を超える温度 |
60 秒を超え100 秒以下の時間 | 4mm | 10℃を超える温度 |
20 秒を超え32 秒以下の時間 | 6mm | 5℃を超える温度 |
32 秒を超え44 秒以下の時間 | 6mm | -1℃を超える温度 |
44 秒を超え100 秒以下の時間 | 6mm | -5℃を超える温度 |
100 秒を超える時間 | 6mm | -5℃以下の温度 |
エ) 容量が、旅客機で輸送する場合にあっては30.、旅客機以外の航空機で輸送する場合にあっては100リットルを超えないこと。
4)引火点を超える温度で輸送されることにより引火性液体とするものの等級は3とする。
(3)可燃性物質
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物件の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める燃焼速度試験を実施し、その試験成績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。
1) 金属粉以外の試験物品にあっては、たい積物(試験物品を底辺20mm、高さ10mm の三角形である長さ250mm の三角柱にたい積したもの。以下同じ。) の燃焼時間(たい積物の一端に添加した場合において、着火し当該一端より80mm から180mm まで離れた部分が燃焼する時間をいう。) を測定し、かつ、燃焼が湿性部 (たい積物の点火する一端と反対側の一端より30mm から40mm まで離れた部分を水で湿性とした部分をいう。以下同じ。)を越えて継続するか否かを観察し、金属粉の試験物品にあっては、 たい積物の燃焼時間(たい積物全体が燃焼する時間をいう。)を測定する。
2)
金属粉以外のもの | 金属粉 | 等級 |
---|---|---|
燃焼時間が45 秒未満であって、かつ、燃焼が湿性部 を越えて継続するもの | 燃焼時間が5分以下のもの | 2 |
燃焼時間が45 秒未満であって、かつ、燃焼が湿性部 を越えないもの | 燃焼時間が5分を超え10分以下のもの | 3 |
(4)自然発火性物質
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物件の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める自然発火性試験を実施し、その試験成績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。
1) 液体の試験物品にあっては、磁器の中で発火するか否かを観察し(試験物品がろ紙上で発火するか否か、又はろ紙を焦がすか否かを観察することを含む。)、固体の試験物品にあっては、粉末の試験物品を落下させ、発火するか否かを観察し、かつ、試験物品を容器(ステンレス鋼製の網で作った一辺が2.5cm 及び10cm の立方体のもの)に充てんし、140℃に加熱した後の試験物品内部の温度上昇を測定する。
2)
液体 | 固体 | 等級 |
---|---|---|
発火したもの又はろ紙を焦がしたもの | 発火したもの | 1 |
− | 一辺が2.5cm の立方体内の試験物品が発火したもの 又は内部温度が200℃を超えたもの(他の試験成績に より等級が1となるものを除く。) | 2 |
− | 一辺が10cm の立方体内の試験物品が発火したもの又は内部温度が200℃を超えたもの(3%以下の包装で輸送する場合は120℃、450.以下の包装で輸送する場合は100℃で試験を行い、60℃の温度上昇が認められない場合は除外する。) | 3 |
3) マンネブ及びマンネブ混合物においては、1)の試験方法において75℃に加熱した後の試験物品内部の温度上昇が200℃を超えないものを除く
(5)水反応可燃性物質
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物件の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める水との反応性試験を実施し、その試験成績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。
1) 水との接触によるガスの発生の有無並びに発生ガスが発火するか否かを観察し、かつ、1時間当たりのガス発生量を測定する(発生ガスが可燃性であるか否かを確認することを含む。)
2)
試験成績 | 等級 |
---|---|
発生ガスが発火したもの又は可燃性ガスの最大発生量が試験物品1kg につき、1分当たり10リットル以上のもの | 1 |
可燃性ガスの最大発生量が試験物品1kg につき、一時間当たり20リットル以上のもの(他の試験成績により等級が1となるものを除く。) | 2 |
可燃性ガスの最大発生量が試験物品1kg につき、一時間当たり1.以上のもの(他の試験成績により等級が1又は2となるものを除く。) | 3 |
- 備考: 上表の最大発生量とは、一時間当たりの発生ガス量のうち最大となるものをいう。
(6)酸化性物質
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物件の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める燃焼試験を実施し、その試績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。ただし、2)により得られる等級が複数の場合(同一の試験方法による場合を含む。)は、そのうちいずれか数値の小さいものを当該物質の等級とする。
1)
イ 酸化性物質(個体)
臭素酸カリウムとファイバーセルロースとの混合物を標準物質(試験物質と比較するための基準とすべき物質をいう。以下同じ。)とし、標準物質30g 及び試験物質とファイバーセルロースとの混合物(質量比1:1及び4:1とする。)30g の燃焼時間(混合物に点火した場合において、着火してから発炎しなくなるまでの時間をいう。以下同じ。)を測定する。なお、試験物質の燃焼時間は、質量比1:1及び4:1の混合物についてそれぞれ測定した燃焼時間のうちいずれか短いものとする。
ロ 酸化性物質(液体)
濃度50%の過塩素酸水溶液、濃度40%の塩素酸ナトリウム水溶液又は65%の硝酸水溶液とファイバーセルロースとの混合物を標準物質(質量比1:1とする。)とし、標準物質2.5g 及び試験物質とファイバーセルロースとの混合物(質量比1:1とする。)2.5g の圧力上昇時間(圧力容器内で混合物に着火し、690kPa から2,070kPa までの圧力上昇時間をいう。)を測定する。
2)イ 酸化性物質(個体)
試験成績 | 等級 |
---|---|
燃焼時間が、臭素酸カリウムとファイバーセルロースとの混合物の質量比が3:2である標準物質の燃焼時間未満のもの | 1 |
燃焼時間が、臭素酸カリウムとファイバーセルロースとの混合物の質量比が2:3である標準物質の燃焼時間以下のもの | 2 |
燃焼時間が、臭素酸カリウムとファイバーセルロースとの混合物の質量比が3:7である標準物質の燃焼時間以下のもの | 3 |
ロ 酸化性物質(液体)
試験成績 | 等級 |
---|---|
混合物が自然発火したもの又は圧力上昇時間が濃度50%の過塩素酸水溶液とファイバーセルロースとの混合物である標準物質の圧力上昇時間未満のもの | 1 |
圧力上昇時間が、濃度40%の塩素酸ナトリウム水溶液とファイバーセルロースとの混合物である標準物質の圧力上昇時間以下のもの | 2 |
圧力上昇時間が、濃度65%の硝酸水溶液とファイバーセルロースとの混合物である標準物質の圧力上昇時間以下のもの | 3 |
(7)毒物
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める経口毒性試験、経皮毒性試験及び吸入毒性試験を実施し、その試験成績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。ただし、2)により得られる等級が複数の場合(同一の試験方法による場合を含む。)は、そのうちいずれか数値の小さいものを当該物質の等級とする。
1)ア 経口毒性試験
経口投与による半数致死量(被験動物が50%の確率で致死する量を被験動物1kg 当たりのmg で表した値をいう。以下同じ。)を求める急性毒性試験とする。
イ 経皮毒性試験
経皮投与による半数致死量を求める急性毒性試験とする。
ウ 吸入毒性試験
経気道投与(投与時間は1時間とする。)による半数致死濃度(被験動物が50%の確率で致死する濃度を、粉じん又は煙霧 である試験物品にあっては、ミリグラム毎リットルで表した値を、蒸気である試験物品にあっては、ミリリットル毎立方メートルで表した値をいう。以下同じ。)を求める急性毒性試験とする。
2)ア 経口毒性試験
試験成績 | 等級 |
---|---|
5mg 以下のもの | 1 |
5mg を超え50mg 以下のもの | 2 |
50mg を超え300mg 以下のもの | 3 |
イ 経皮毒性試験
試験成績 | 等級 |
---|---|
50mg 以下のもの | 1 |
50mg を超え200mg 以下のもの | 2 |
200mg を超え1,000mg 以下のもの | 3 |
ウ 吸入毒性試験(粉じん又は煙霧の場合)
試験成績 | 等級 |
---|---|
0.2mg 以下のもの | 1 |
0.2mg を超え2mg 以下のもの | 2 |
2mg を超え4mg 以下のもの | 3 |
エ 吸入毒性試験(蒸気の場合)
試験成績 | 等級 |
---|---|
半数致死濃度に10 を乗じた値が飽和蒸気濃度以下であり、かつ、半数致死濃度が1,000ml以下のもの | 1 |
半数致死濃度が飽和蒸気濃度以下であり、かつ、3,000ml以下のもの(他の試験成績により等級が1となるものを除く。) | 2 |
半数致死濃度に5分の1を乗じた値が飽和蒸気濃度以下であり、かつ、半数致死濃度が5,000ml以下のもの(他の試験成績により等級が1又は2となるものを除く。) | 3 |
- 備考 飽和蒸気濃度は温度20℃及び気圧1気圧の空気中における試験物品の飽和状態での濃度を1m3当たりのmlで表した値をいう。
(8)腐食性物質
表中品名の欄に掲げる同一の輸送許容物件の項において複数の等級が掲げられている場合は、1)に定める腐食性試験を実施し、その成績に基づき、2)の表により当該輸送許容物件の等級の判定を行うものとする。
1) 動物の皮ふに試験物品(試験の対象である物品をいう。以下同じ。)を接触させ、当該部位に壊死が視認されるまでの時間を測定し、かつ、摂氏55 度における試験物品の鋼又はアルミニウムに対する浸しょく度を求める。なお、浸しょく度は、鋼製又はアルミニウム製の試験片を試験物品中に一定期間浸漬させ、浸漬後の質量減少量を測定し、次の算式により算定する。
X=(W×10×365)/(d×S×T)
この場合において、
Xは、試験片の侵しょく度をミリメートル毎年として表した数値
Wは、試験片の質量減少量をグラム毎立方センチメートルで表した数値
dは、試験片の材料の密度を平方センチメートルで表した数値
Sは、試験片の浸漬面積を平方センチメートルで表した数値
Tは、試験片の浸漬日数を表した数値
2)
試験成績 | 等級 |
---|---|
皮膚に当該物質を3分以内接触させた場合、60 分以内に壊死が起こるもの | 1 |
皮膚に当該物質を3分を超え60 分以内接触させた場合、14 日以内に壊死が起こるもの | 2 |
皮膚に当該物質を60 分を超え4時間以下の時間接触させた場合、14 日以内に壊死が起こるもの、又は浸しょく度が1年あたり6.25mm を超えるもの | 3 |
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